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満足できる入れ歯作りの流れ

入れ歯を作る際に、自分に合った歯科医院を選ぶことは、重要なことです。近所にあって昔からかかっている先生のところに通うのは、あたり前なのかもしれませんが、歯科医と言っても、得意な専門分野があります。 

入れ歯作りは、補綴(ほてつ)という分野に入ります。

補綴歯科とは、失われた歯や歯肉を人工的な義歯を使って、咀嚼、発音などの機能、審美性を回復させるための歯科治療のことです。

また、満足できる入れ歯を作るためには、患者さんとのコミュニケーションに時間をかけて、丁寧な治療を心がけている歯科医を選ぶ必要があります。

患者さんも、予め来院前に、現在、何を悩んでいて、どんなことを希望しているのか、なるべく具体的に考えて準備して頂きたいと思います。 来院前に、紙に書いておかれると、いいたいことを言い忘れることがなく、良いかもしれません。


患者さんも、予め来院前に、現在、何を悩んでいて、どんなことを希望しているのか、なるべく具体的に考えて準備して頂きたいと思います。 来院前に、紙に書いておかれると、いいたいことを言い忘れることがなく、良いかもしれません。

診査は、問診、視診、触診、レントゲンによる診査、模型による診査などがあります。大きな部分から小さな部分へ、大雑把な診査から精密な診査 へと進みます。そして、患者さんが希望する満足できる入れ歯作りの治療計画が作られます。

治療計画についての説明、治療費見積もりの説明の中で、患者さんが、納得できないうちには、治療が進められることがあってはいけません。 わからないことがあったら、治療前に、歯科医に聞いておきましょう。

入れ歯を作る前に、抜かなくてはならない歯や、残っている歯で治療が必要な歯があったら、その処置を行います。

型取りは、専門用語で印象採得といいます。

通常、1回目の型取りは、診査のためと精密な型取りの準備のために行います。

2回目の精密な型取りでは、ひとりひとりの歯や歯ぐきの土手(顎提)の形に合わせた個人トレーというものを使います。この個人トレーは、1回目の型取りにより、作製しておきます。

入れ歯の外形や厚みが、周りの筋肉と調和していないと、簡単に浮き上がったり、あたって痛みがおきたりします。そのために、筋形成を行い、周りの筋肉の動きを記録するのです。

適切な形に作製した個人トレーを用いて、筋肉の動きを、熱で柔らかくなる樹脂(スティックコンパウンド)などにより筋肉の動きの記録をとります。

一度にはできないため、全周に数回に分けて、部分的に行います。

筋形成後に、精密な型取りを行う。型取りの材料には、一般的にシリコンを使用する。 一人一人の患者さんにぴったりと合う入れ歯を作るためには、精密な型取りが、基本である。

精密な筋形成、印象には、60〜90分ほどの時間が必要である。また、精密な型取りには、歯科医師の技術が試される。

筋形成後に、精密な型取り(印象)が行われた。

上下の蝋提が、お口に入った状態。

型取りして、作った顎堤模型から、蝋(ろう)堤というものを作り、蝋を足したり、取ったりして上下の入れ歯の原型となるものを作ります。その蝋提を使って、かみ合わせの記録をとります。

かみ合わせは、筋肉、顎関節、顔形にとって、適切な状態でなければなりません。 はじめに、上顎の蝋提の形を整えます。上の前歯となる部分で、最も大事なことは、見た目です。鼻から上唇にかけてのハリに気を配り、歯がちょうど良く見えるように整えます。 上顎の蝋提が仕上がった後に、下顎の蝋提を調整して、かみ合わせの高さを決定します。 この時には、唇が閉じやすいか?噛む時にちゅうど良い力が入るか?唾をうまく飲めるか?顔形は自然でバランスが良いかなどで決定します。 そして、出来上がった上下の蝋提を使って、かみ合わせの記録をとります。

総入れ歯のかみ合わせの記録をより正確にとる場合には、ゴシックアーチトレーサーというものを使用します。下顎を左右、前後に動かして、矢じりのような図がうまく描けるまで練習して頂き、正確、精密なかみ合わせの記録をとります。

ゴシックアーチトレーサーが、お口の中に入っている。

ゴシックアーチトレーサーで、矢じりのように下顎の運動が記録された。

ゴシックアーチにより、上下顎の正確なかみ合わせの記録がとれる。

咬合器を使用して、調整した蝋提を基準にして、 蝋の上に人工歯を並べます。

上下のかみ合わせが記録されたら、咬合器という装置に、模型を取り付けます。咬合器は、人間の顎のように、開閉、前後左右の動きができるようになっています。 人工歯は、蝋提を基準として配列します。人工歯には、いろいろな色形がありますので、歯科医と相談して決めましょう。


前歯には、大きな歯、真っ白な歯、年相応の色をした歯、小さな歯、丸みのある歯、四角い歯、尖った歯など、様々です。


奥歯も、かみ合わせの部分が平らな歯(0°臼歯)斜面のついた歯(20°臼歯、30°臼歯)、十字型の金属の歯(ブレードティース)などがあり、患者さんの顎堤や顎関節の状態、どのような食べ物が好きか、などによって選択します


配列も、女優の○○さんのように前歯2本を前に出してほしいとか、昔の自分の歯と同じにしてほしいとか、わかわかしく見せてほしいなど、ある程度、希望を取り入れることができます。 前歯は、審美性と発音を重視し、奥歯は機能を重視して並べます。

入れ歯の試適は、オーダーメイドの服にたとえれば仮縫いした服の試着といったところです。高価なオーダーメイドの服は、いきなり完成するわけではなく、仮縫いの状態でうまくできているかどうかを調べて、直す必要があるときには、その部分を直して完成します。


入れ歯も同じように、蝋義歯という蝋の上に人工歯が並んだ状態で、歯並びや、かみ合わせ、歯の色などが、うまくできているかどうかを調べる必要があります。完成してしまってからでは遅すぎますので、 この時点で気になることがありましたら、歯科医に伝えてください。

蝋義歯の蝋をレジン(プラスティック)に置き換えるには、蝋義歯を石膏の中に埋めてから、熱で溶かします。そうすると、蝋の部分が空洞になりますので、そこに柔らかいピンクいろ(歯ぐきの色)のレジンを押し込み、固めるのです。

ところが、レジンという材料は、固まる時にわずかに収縮を起こしてしまいます。精密にできた入れ歯が作製できるかどうかも、この収縮を抑えることできるにかかっています。 収縮をなるべく抑えるためには、比較的、温度を低くして、ゆっくりと時間をかけて重合させたり、圧力をかけながら重合を行い、収縮した分を足していく方法が、開発されています。

入れ歯の調整は、歯ぐきとの当たりの調整、周囲の筋肉との調和の調整、そしてかみ合わせの調整が主となります。 また、部分入れ歯では、残っている歯にぴったりと合っているかどうかも、調整しなければなりません。 調整は、1回で済むわけではありません。 入れ歯を、本当に調子よく使うためには、5〜6回の調整は、必要なもの と考えて下さい。歯科医院では、なんともなくても、家に帰って食事をしてみると、いろいろな不都合が見つかることが、よくあります。食べてみると、歯茎に当たる部分が出てきたり、食べようとすると入れ歯ががたついたり、うまく飲み込めなかったりと、歯科医院の中では、わかならなかった様々なことが、起きるかもしれません。


いくら筋形成を行って、精密な型取りを行っていても、実際にものを噛む時には、お口の中の筋肉は、非常に複雑に動くため、一人一人の噛み方や、舌や唇、頬の筋肉の動きに調和するように、調整する必要がでるのは、当然のことです。 この調整がうまくできるかどうかも、歯科医の知識と技術、経験の見せどころ です。患者さんは、どこが痛いのか、はっきりとわからないこともあります。また、何が原因で痛いのかもよくわからないことがよくあります。 この調整は、うまくいくと、ほんの僅か、紙1枚の厚みを削っただけで、痛かったことが嘘のように消えてしまい、驚かれることもしばしばです。また、かみ合わせをほんの少し、調整しただけでも、入れ歯のがたつきがなくなり、痛みも消えてしまうこともあります。

入れ歯は、道具として使いこなす ことがたいへん重要です。そのためには、患者さん自身が、リハビリの気持ちを持って、あせらず、慣れて頂くことが重要なことです。

入れ歯の当たりを調べます。

調整後

上下の総入れ歯が、入った状態。